三浦直之

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Last update: 2024-01-20
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年齢を重ねるのが楽しみになる小説。

こども時代をカルフォニアで過ごた「わたし」とアンとカズは、60歳を過ぎたコロナ禍の東京で再会を果たす。
「老い」というと勝手に乾いたイメージやスローなイメージを抱いてしまうけれど、この3人の会話はむしろ潤いだらけで、しかもその潤いの内側には歳を重ねたからこその甘み、塩味、うま味、苦味、酸味がぎっしり詰まっていてずっと楽しい。

どの会話を読んでも、「俺もこんなおしゃべりできるようになりて〜」となるけれど、その中でもとくに食にまつわる会話が好き。

「いやあ、結婚した相手が、しゅうまいのグリーンピースを憎んでてね。崎陽軒のしゅうまいを買って帰ると、ものすごく怒ったの」

これは、語り部の「わたし」がカズを含めた知人たちと食事をしてるときに言うセリフで、このセリフを言うまでの流れがとてもいい。このとき「わたし」が食事している場所はすし屋で、「わたし」は食事相手がすしを手に取る姿から太宰治の小説を連想し、さらに太宰の小説の一節「グリンピイスのスウプをひらりひらり」に繋がり、唐突に上記のセリフを発する。
すし屋という落ち着いた空間と、それに比べると手軽な崎陽軒のしゅうまいの絶妙な不一致さ。

あるいはこんな会話。
「わたし」が久しぶりにカズの部屋を訪れ料理をしている。

「自分のためだけに、みじん切りや千切りをする気になれないよ、わたしゃ」
「おれはときどき、ものすごくみじん切りしたくなる」
「何をみじん切りにするの?」
「あれだな、やっぱり、玉ねぎだな。臨場感あるし」

この「わたしゃ」のさくらももこ感も素晴らしいのだけど、最後の「臨場感あるし」が最高。分かるようで分からないようで分かるのさじ加減。そうか、あの玉ねぎをみじん切りするときに生まれる迫力は臨場感と呼べばとかったのか。

読み終えると、食欲がわくし、誰かに会いたくなる。
(Date: 2024-01-11 01:35:39 Likes: 30 Comments: 0 Engagement: 6.1%)



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